トップページ >> 日本のためのとりなし >> 2008年度 >> 4月号レポート
悪より救い出したまえ
                 ― 地球温暖化対策の欺瞞 ―     ヨハネ 皆川尚一
序 言
  日本は今、狼の群れに囲まれた羊のように危く見えます。私たちは地球温暖化対策において、自国の置かれた危険な立場に気づく必要があると思います。
  ローマ法王ベネディクト16世も本年1月元日の「世界平和の日」のメッセージにおいて「地球温暖化に対する解決策はすべて、しっかりした証拠に基づくべきであり、『疑わしいイデオロギー』に基づくものであってはならない」と警告しました(詳細は本論で後述)。
  3月19日に開催された日本のとりなし委員会では、「地球温暖化」は本当に起っているのかについて討議され、これについてのレポートをとりなしニュースレター4月号に記載することになりました。わたしは昨年12月に東京・早稲田の書店で「幻の水素社会」(「環境問題」に踊らされるピエロたち)藤井耕一郎著2005年 光文社刊に出会いました。そして、この本によって「地球温暖化の欺瞞」について教えられたのです。以下に述べることは主としてこの本からの引用でありますが、本年3月発刊の「地球温暖化は止まらない」S.F.シンガー&D.T.エイヴァリー著 東洋経済新聞社の内容をも参照して、問題点をご紹介したいと思います。

本当は恐ろしい京都議定書
 2005年2月16日、地球温暖化を防止する京都議定書が発効しました。日本のほとんどのメディアが、議長国としての責任が果たせたと胸をなでおろし、小泉首相は「地球温暖化はすでに現実のものとなっている。温室効果ガスの排出を続ければ、将来の世代に地球規模で影響が生じる。日本には優れた環境技術があり、各国への普及を推進していく」というメッセージを官邸から送りました。
  京都議定書によって、先進国に課せられた二酸化炭素など温室効果ガスの削減量は国際的な公約となり、法的拘束力が生じました。
  つまり、削減目標を達成しないと、国際公約違反となるのです。
  具体的には、先進国全体で、2008年から2012年までの平均排出量を、1990年比5.2%削減するのです。
  日本の削減目標は6%ですが、2003年の排出量は削減するどころか、逆に8%ふえていますから、実際は14%も削減しなければならないのです。ハッキリ言って、実現の可能性は1%もないのに、だれもその点に疑問を持たないのは実に不思議であります。それほど「地球温暖化防止」というお題目は磐石だったと言えるでしょう。
  しかし、この京都議定書は、お人好しの日本だけがカモにされ、見事なまでに「負け組」にされるだけの政治劇に過ぎなかったのです。

地球温暖化のイメージ戦略
 2005年1月10日〜12日にかけて、NHKの衛星放送「BS1」は3夜連続で「地球温暖化」をテーマにしたドキュメンタリー番組を放送しました。これらは、すべてカナダの「ストーンヘイヴン・プロダクションが制作した2003年の作品で、全編を通したタイトルは 「地球温暖化 THE GREAT WARMING」です。
  第1回は「人類のつめ跡」、第2回は「予測を超える気象災害」、第3回の最終回は「子供たちに残す解決策」となっています。  
  第1回は、「どしゃ降りの雨 上がりつづける気温 重い空気に病気の海 もう朝 起きたくない」という子供の歌声から始まり、次のようなナレーションが重ねられます。
《現在の子供たちが成人する頃、世界は大変な時代を迎えるでしょう。
―――人類は「大温暖化時代」を生きなければならないのです。人びとの生活は一変してしまうでしょう》  
  環境問題を取り扱うテレビ番組の「定番」ともいえる導入です。「地球温暖化」は、あらゆる災厄をもたらす「悪=汚れ役」とされています。具体的にいえば、それは「温暖化」→「災害の増加」というくどいほどの強調に現われています。  
  例えば、竜巻の映像を見せながら、「2003年5月、アメリカでは、この1ヵ月だけで562回もの竜巻が観測されました」と語りかけ、洪水の映像を見せながら、「このまま温暖化が進めば、地球は取り返しのつかないダメージを受けるでしょう。私たちは子供たちの未来に大きな課題を残したのです」とたたみかけます。  
  不安な表情を浮かべた子供たちの顔が大写しにされたら、誰だって不安な気持になるにちがいありません。従来は、このような不安に訴えることによって、地球温暖化の「政治性」を蔽い隠そうとしてきた傾向が強かったのですが、このところその不安に人口問題も加えられ、映像は露骨になり、むしろわかりやすくなりました。  
  というのも、地球の気温が有史以来もっとも早いスピードで上昇し、気候も変動し始めていることを前提にして、こうした番組が制作されるからです。「豊かになろうとする人類の欲求」という言葉と重ねあわせて、インドや中国の人混みを大写しにすることによって、インド人や中国人は車を持ちたがるが、人類にとって迷惑な結果になるという暗黙のメッセージがふくまれているのです。なにしろ中国政府は「ドイツを抜いて、アメリカ、日本に次ぐ世界第3位の自動車生産国になる」と発表していますし、白人にとっては石油文明を目指すアジア人は迷惑な存在なのです。このような感情に訴える「啓蒙運動」の水面下に、政治的なパワーゲームが隠されています。そして、その上に、「経済=ビジネス」問題が加わって来ました。

国際会議の攻防戦
  そもそも、環境問題をめぐる国際会議は、世界113カ国の代表が参加して1972年、スエーデンのストックホルムで開かれました。この年は、「成長の限界」という本が出版され、人口が100億人を突破すると人類は滅びるという予測が発表された年でした。

(1) 地球寒冷化問題
  1970年代は、温暖化ではなく、逆に寒冷化が心配されていました。雑誌のタイトルにも、
*「BBCが流した『新氷河期迫る』説の恐怖」 週刊サンケイ1974年12月12日号
*「氷河時代は来るのか ヨーロッパやニューヨーク市が氷河に埋もれるとき」文芸春秋1977年4月号
*「ついに小氷河期に入った!北半球の雪氷面積が急増中」週刊現代1980年9月18日号
と言った恐怖心を煽るものが並んでいます。もちろん人類にとっては温暖化よりも寒冷化のほうが遥かに恐ろしいのです。

(2) 地球温暖化問題
  ところが、1985年「気候変動に関する科学的知見整理のための国際フィラハ会議」(オーストリア)が開かれて、「地球温暖化」が議題に上りました。このあたりから「オゾン層の破壊とフロンガス問題」も盛んに叫ばれるようになります。
  1992年にリォデジャネイロの地球サミットで「先進国」に対して、2000年までに温室効果ガス、(二酸化炭素、メタン、亜鉛化窒素、代替フロン等)の排出量を1990年のレベルにまで戻すことが目標として設定されました。 そして、オゾン層破壊問題より、「地球温暖化」が人類最大の課題に祭り上げられるようになります。それに火をつけた人物が、NASAゴダード宇宙センターの気象学者ジェームス・ハンセンでした。彼は「地球温暖化の原因が温室効果ガスによる確率は99%だ」とアメリカ上院公聴会で証言しました。そして、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)という機関が作られ、IPCCの2000年の第3次報告書では、「2100年の平均気温の上昇は1.4〜5.8度、海面の平均水位の上昇は最大88cm」との予測を発表しました。IPCCの発表は第1次から第3次へと深刻さを増してきましたが、報告書作成の段階でも、国際会議と同様に、内部では考え方の違う学者たちが激しくぶつかり合い、結局は学者たちの力関係でレポートが作られたのです。従って、地球温暖化が「100%科学的」という話しではないことを知っておく必要があります。
  1996年のジュネーブ会議では、産油国や中国が「地球温暖化説の不確実性」を問題にしましたが、アメリカは温暖化説を認める方向に態度を変えました。

(3) 地球温暖化防止京都会議
  1997年12月1日、京都で「地球温暖化防止京都会議」が開催されましたが、攻防戦のポイントは次の五つでした。
 1) 先進国の削減目標は一律か、バラバラか。
 2) 削減目標の数値を具体的にどうするか。
 3) 将来は途上国も削減・抑制に加わるのか。
 4) 排出枠の取引や前借りを認めるのか。
 5) 森林などの吸収源をカウントするのか。
これらの複雑な交渉に加えて、会議の主催国である日本政府は、通産省が削減目標達成不可能、環境庁が達成可能との意見対立したまま環境大臣が議長を務めるという状態で、会議の進行そのものも激しく二転、三転しました。
  当時のアメリカはクリントン政権の時代で、この京都会議にはゴア副大統領が途中から出席、それまで「削減0%」に固執していたアメリカ政府の立場を改めたので、ここに京都議定書が決定されました。
  その概要は、先進国は2008年から2012年(第1期)までの間に温暖化ガスと認められた二酸化炭素や亜鉛化窒素、メタンなどを1990年の排出量と比較して5.2%減らす。これに基き、国によって異なる削減目標を決める。さらに排出権売買を導入する、というものでした。
  一応先進国に削減目標が割り振られ、議定書は採択されましたが、次に必要なのは各国政府による批准です。日本の批准は2002年6月とかなり遅い方でした。しかし、アメリカは態度を保留しているうちにブッシュ政権が誕生し、この議定書から離脱してしまいました。こうして京都議定書は長い間宙ぶらりんになったのです。日本としてはアメリカにならって離脱したほうがよかったのかも知れませんでしたが、ロシアのプーチン大統領が批准を決め、上下両院で可決されたため、議定書に書かれた2条件が満たされ、2005年2月に宙に浮いていた京都議定書が発効しました。

(4) 京都議定書の「負け組」日本
  第1ページで記述したように、日本は今年2008年〜2012年の期間、1990年当時より二酸化炭素の排出量を1年当たり6%以上減らす義務が生じます。しかし、これまで既に多大の努力をしているにもかかわらず、排出量は8%もふえていますので実質的には14%以上も削減しなければなりません。つまり、実際は1%も減らすことが出来ないし、削減は絶望的なのです。そこで起る問題を列挙すると、こうなります、
 1) 削減目標に余裕のある国に代金を払い、「排出量=割当量」を譲り
   受ける。 これはカネで解決する道です。排出量取引という環境ビジ
   ネスとして、新しい商売が始まるわけです。例えばロシアは自らを発
   展途上国とし、削減量0%で京都議定書に批准を決めた裏には、こ
   の排出量取引で日本からカネを稼いで、折を見て離脱するかも知
   れない姿勢を示しています。また、中国もインドも発展途上国扱い
   になっています。
 2) この取引のために、日本は環境税を大幅に引き上げなければなら
   なくなります。それと同時に消費税率も引き上げられるでしょう。そし
   て、そのしわ寄せは社会的弱者に押し寄せてくるでしょう。
 3) 2012年までに削減目標が達成できないならば、2013年からの第
   2期の削減目標が、第1期の3倍に増やされ、新たな罰則(ペナル
   ティー)も加えられることになります。

予防原則の存在
  世の中には「予防原則(プレコーショナリー・プリンシプル)」という考え方があります。特に環境問題に適用されている予防原則では、「科学的因果関係が実証されていなくても、まず規制し、被害を未然に防止する」というものです。この科学抜きの予防原則という世界の潮流を先取りするように、新たな「環境SF映画」も作られ始めました。2004年に公開されて大ヒットした映画「デイ・アフター・トゥモロー」がそれです。
  この映画の主題はズバリ「地球温暖化問題」です。しかも、「数十年先のSF話」ではなく、「数年先」でもなく、「デイ・アフター・トゥモロー」すなわち「明後日(あさって)」に地球温暖化の悪影響で、いきなり氷河期がやって来るという内容なのです。監督はドイツ人のローランド・エメリッヒ。筋書きは、地球温暖化が進んで海洋の温度が高くなり、それによって北半球に低温の渦巻きが発生し、あっという間にアメリカが氷河期に突入するという典型的なパニック映画です。
  映画の中では、リーダーシップを発揮すべきアメリカ大統領があっさり死んでしまうし、極寒の氷雪からのがれて来たアメリカ人が、難民となり、着のみ着のままでリオグランデ川を渡ってメキシコに入国させてもらうという皮肉たっぷりの映画です。
  しかし、それだけでなくこの映画は「地球温暖化」がテーマになっているのに、急激な「寒冷化」によって突然氷河期が来るというバニック映画なのです。この内容を受けて、環境保護団体「グリーンピース」は「ザ・デイ・イズ・トゥデイ(その日は今日だ)」という解説文を作り、《現実に起こり得るシナリオだろうか? 明確な答えはない。映画の中の突然の気候異変は誇張されすぎている。本格的な氷河期は来ないだろう。だが今、人間の活動に起因する気候変動の兆候は現われている。速やかな対応がとられなければならない》と訴えました。

持続可能な地球倫理
  このように、科学を装いながら、実は科学抜きの「予防原則」が働いて、「早くしなければ大変なことになる」と危機感を煽り立てる背後には、ある種のイデオロギーが発信源となっているようです。それは、ゴルバチョフ的新左翼主義の持続可能な地球倫理です。地球の人口が100億人になったら人類は滅びる。だから持続可能な数に減らす必要がある(前出第2ページ)というのが、持続可能な無神論的地球倫理です。国連はこういうイデオロギーの支配下にあります。

ローマ法王の警告
  巻頭に紹介したローマ法王ベネディクト16世のメッセージは、以上のような地球倫理に基づく環境保護運動のドグマ(教理、あるいは独断)に警戒するようにと勧めています。法王は地球温暖化に対する解決策はすべて、しっかりした根拠に基づくべきであり、『疑わしいイデオロギー』に基くものであってはならない。北極の氷の溶解や、前例のない気候災害に関する裏づけのない予測は、もっぱら環境保護運動のドグマに基いていることを示唆しました。又、気候変動に対する「迅速な行動」を求める大合唱に触れて、「環境的バランスを尊重しつつ、万人の福祉を考えて慎重に行動するように」と警告しました。(「地球温暖化は止まらない」p.32参照)

結 語
  巻頭で紹介した「地球温暖化は止まらない」という本には、《確かに世界は温暖化しているが、地球は約1500年の周期で温暖化するものだから止まらない。人類による二酸化炭素の増加で温暖化するのではない。人為的に二酸化炭素を減らそうとする試みはエネルギー費用を高騰させ、人類の福祉に反する》と述べられています。
  京都議定書は、不確かな科学的予測に基づく政治的決定によって成立したものですから、議長国を務めた日本は、出来るだけ早くこの国際的公約を解消し、このわなから抜け出す必要があると思います。2012年には第一期の目標が終るので、その年を地球温暖化防止会議を解散する年として、その実現に努力することが賢明ではないかと思います。
  聖書に「神は試練と同時に、それに耐えられるように、のがれる道も備えて下さる」(Tコリ10:13)とあり、主の祈りにも「我らを試みにあわせず、悪より救い出したまえ」とあります。

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